車の情報誌「ニューモデルマガジンX」編集長監修
ホンダから登場したコンパクトSUVのWR-V。2023年12月に国内発表され、販売は2024年3月に始まった。生産はインドで行われている。つまり、海外生産の逆輸入車だ。ボディは全長が4m+α、全幅が1.8mを少し下回るサイズ。つまり、ヤリスCROSS、キックス、CX-3だけでなく、ヴェゼルとの競合も予想される。
それでは、ライバル車と比較して突出したポイントは何か。それはズバリ、価格だ。WR-Vのエントリー価格は約210万円で、マイナーチェンジ前まで販売されていたヴェゼルのガソリン車(約234万円)より10%近く抑えられている(バッティングを避けるため、ヴェゼルのガソリン車はマイナーチェンジで4WD車に集約された)。インドでの生産やシンプルで質実剛健な設計により、魅力的な価格を実現している。堂々としたSUVが低価格で購入できることは、ユーザーにとってじつに頼もしいことだ。しかし、安くても品質が低ければ意味がない。その点もしっかりとバランスよく仕立てているところがWR-Vの魅力だ。では、どんなクルマに仕上がっているのかチェックしてみよう。
全長×全幅×全高は4325×1790×1650mm、ホイールベースは2650mm、車両重量は1230kg。プラットフォームはフィットのセンタータンク方式をベースにしつつ、後ろ半分はアジア向けモデルから流用されてホイールベースはヴェゼルより40mm延長されて2650mmに達している。また、ヴェゼルと比べて全高は70mm、室内高は55mm高い。このため、より健康的なパッケージングに仕上がっている。とくに後席の居住空間はライバル車と比べても格段に優れている。Bセグメントながら、広いレッグスペースを確保することで大人でも窮屈な思いをすることなく乗車できることが、WR-Vの大きな美点と言えるだろう。
外観デザインは、コンパクトSUVながら堂々としたいで立ち。切り立ったフロントエンドや黒い大型グリル、長めのホイールベース、大径タイヤがその印象を強めている。 さらに、ボディ下方を取り巻く無塗装の樹脂ガーニッシュがSUVらしさを演出。最上級グレードではさらにメッキおよびシルバー調パーツが与えられる。水平基調のノーズにより、ボンネットフードは運転席から広範囲にわたって見えるのがいい。
ボディカラーは5色が用意されているが、イルミナスレッド・メタリックをはじめ、プラチナホワイト・パール、ゴールドブラウン・メタリック、メテオロイドグレー・メタリックの4色は追加費用が必要なオプション価格で、無償で選べるのはクリスタルブラック・パールのみ。
車内に目を移すと、シンプルな水平基調のダッシュボードを採用。装備類も必要十分。
レバータイプの手引き式パーキングブレーキも安心感がある。 カジュアルな印象をもたらすストライプ柄のファブリック表皮と合皮が組み合わされた前後シートはサイズが大きくて居住性も悪くない。
とくに後席の広さと快適性は特筆もので、ゆったりとくつろげそうだ。センタータンク方式のシャシーが流用されているものの、足の置き場に困ることもない。
欲を言えば、サイドシルの幅が10cmほどあるので、後席フロアがもう少し高ければ乗降性はさらに良くなったに違いない。
ラゲッジスペースは、5人乗車時の荷室容量は458L。ワゴン的な使い方にも対応できそうだが、消滅したシャトルの570Lほどではない。それでもBセグメントのコンパクトSUVとしてはトップレベルにある。後席シートに座面のダイブダウン機構はなく、シンプルな前倒しのみ。
設定されているパワートレインは、ヴェゼルのガソリン車と同じ118ps/14.5kg-mを発生する1.5L直列4気筒DOHCエンジン&CVTの組み合わせのみで、電気モーターなどの電動デバイスが採用されていない点が潔い。
ハイブリッドカーに慣れてきた消費者が多い昨今、減速時にエネルギーが回収されないことや信号待ちでもエンジンがアイドリングし続けて燃料を消費するというのは、ちょっと「もったいない」と感じる人もいるかもしれない。救いなのはアイドリング時の音と振動が皆無で、エンジンが止まっているのでは?と感じさせるほど静粛性は高く、実際に運転中、信号等で停車してもエンジンが動き続けていることが気になることはない。ちなみに、WR-Vはアジア諸国をメイン市場に見据えて開発されたため、駆動方式は2WDのみの設定で、4WDモデルは用意されていない。
CVTにはステップアップ制御が含まれているため、アクセル開度の大きい加速時には有段ATのようにリズミカルな変速が行われる。キビキビとしたフィーリングが好みであれば、この制御の効果は大きいことだろう。
大きなタイヤを履いているSUVは乗り心地の面で不利だが、街中で試乗した限り、想定以上に良好だった。小さな凹凸はしっかりと吸収され、角の取れた、まろやかな乗り味を実現。道路事情が芳しくないアジア圏に合わせたチューニングが吉と出たか。一方で車速が上がると風切り音が思いの外、聞こえてくるのが惜しかった。高速道路での直進安定性も、少し前のクルマのよう。
また、これは好き嫌いが分かれる部分かもしれないが、運転席からボンネットフードが広範囲にわたって見えるため、車両感覚をつかみやすい反面、実際よりも大きなクルマを扱っている錯覚に陥って気を使う場面もあった。
価格を抑えられた逆輸入モデルとは言え、最新の安全装備に抜かりはない。ワイドカメラと8つのセンサーが用いられたADAS(先進運転支援システム)を搭載。衝突被害軽減ブレーキ、路外逸脱抑制機能、標識認識機能、アダプティブ・クルーズコントロール、車線維持支援システム、自動ハイビームなどの安全装備は全車に標準装備されている。
参考までに、WLTCモード燃費値は16.2km/L。実際に燃費計測したところ、満タン法で計測して、市街地160kmは11.8km/L、郊外160kmは17.4km/L、高速道路100km(平均時速100km/h)は15.9km/Lで、トータル420kmを走らせた総合燃費は車載の燃費計で14.3km/L。満タン法では14.4km/Lだった。燃料タンク容量は40Lなので、満タン法の計測値から計算すれば一度の満タン給油で576kmほど走れる計算だ。ハイブリッドカーに比べれば、あまり優れた燃費値とは言えないかもしれないが、アイドリングストップ機構のないガソリン車と考えれば、実用上は充分な燃費値と言えるのではないだろうか。ちなみに以前計測したヴェゼル1.5Lガソリン車(2WD)は燃費計で14.3km/L、満タン法で14.5km/Lと、WR-Vとほぼ同等だった。ハイブリッド仕様の2WDモデルは満タン法で22.2km/Lだった。
いまどきの軽自動車は、安全装備を充実させていることもあって価格が200万円を超えてしまうことも珍しくない。そう考えると、約210万円から価格設定されているWR-Vはバーゲンプライス以外の何物でもない。もちろん、ライバル車である他のコンパクトSUVと比較すれば、シンプルな装備や使い勝手に差があるのは当然かもしれない。しかし、そういった部分も割り切ってしまえば、普段使いでは不満を感じることは少ないに違いない。このコンパクトSUVが軽自動車と同等の価格で手に入るのは、正直言って嬉しいの一言だろう。
しんりょうみつぐ 1959年3月20日生まれ。関西大学社会学部マスコミ(現メディア)専攻卒業後、自動車業界誌やJAF等を経て、「ニューモデルマガジンX」月刊化創刊メンバー。35年目に入った。5年目から編集長。その後2度更迭され2度編集長に復帰、現在に至る。自動車業界ウォッチャーとして42年だが、本人は「少々長くやり過ぎたかも」と自嘲気味だ。徹底した現場主義で、自動車行政はもとより自動車開発、生産から販売まで守備範囲は広い。最近は業際感覚で先進技術を取材。マガジンX(ムックハウス)を2011年にMBOした。
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