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オリコオートリース2022年・2023年2年連続販売実績No.1

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高い走破性をそのままに、快適性も向上した軽オフローダーのジムニー

車の情報誌「ニューモデルマガジンX」編集長監修

この記事の監修者
月間ニューモデルマガジンX編集部
代表取締役社長兼編集長
神領 貢

1970年に日本の軽自動車規格で初めての本格クロスカントリー4WDとして誕生したスズキ・ジムニー。その後、他メーカーからも同様の軽4WDが発売されたものの、誕生から半世紀以上が経った現在、このクラスのコンパクトなクロカン4WDとしては唯一の存在で、日本に限らず世界中で重宝されている。販売は日本を除くと欧州、アジア、中南米など世界194カ国、世界累計販売数は現行の4代目が発売された2018年7月の時点で285万台に及んでいる。これはジムニーが持つ悪路走破性はもちろんのこと、そのコンパクトな車体による取り回しの良さから、世界中の「ジムニーでなければ入り込むことのできないような場所」で重要な交通手段として利用されているからである。そのため、いまではスズキにとって欠くことのできない世界戦略車のひとつにもなっている。

ジムニー フロント
ジムニー リア

ジムニーが一貫して継承し続けている特徴は、ラダーフレーム、FR(後輪駆動)レイアウト、パートタイム4WD、前後リジッドサスペンションといった高い悪路走破性能を支える基本構造にある。1998年の3代目デビューから20年の歳月を経て登場した現行4代目ジムニーでもこの伝統は引き継がれているが、その性能はさらに進化を遂げている。

例えばラダーフレーム。これは一般的なモノコック構造とは異なり、梯子状に組んだ頑強なフレームの上にボディを載せた車体構造のことで、悪路からの衝撃を受け止めるためにもクロカン4WDには必須の車体構造だが、4代目ジムニーではその中央部をX状のメンバーに変更して強化。さらには前後にもクロスメンバーを追加することで、ねじり剛性は先代よりも約1.5倍に高めている。また、フレームとボディをつなぐゴムマウントも新設計し、水平方向に対しては硬くして安定感を高めながら、上下方向には柔らかくすることでフレームから伝わる振動を低減し、乗り心地を改善している。

FRレイアウトにこだわるのも、険しい山道の凹凸を越えるためにはフロントタイヤ前端よりも後方にエンジンを配置してアプローチアングルを確保する必要があるためだ。普段は後輪で駆動して、必要な時には前輪と後輪を直結して4WDに切り替えられるパートタイム4WDを採用し続けているのも、センターデフを介した複雑な構造にするよりも、シンプルで信頼性の高い機械式副変速機にしておいたほうが信頼性が高いからだ。2WDと4WDの切り替えはシフトノブ下にあるトランスファーレバーで行う。単なる不整地路くらいであれば4H(4WD高速)でも十分だが、険しい登坂路では4L(4WD低速)に切り替えると通常の約2倍の駆動力を得られて走破性が高まる。

サスペンションは左右の車輪をダイレクトにつないだリジッドアクスル式を継承している。

ジムニー サスペンション

通常の乗用車で使われる独立懸架式に比べたらオンロードでの乗り心地は悪くなるのだが、悪路での優れた接地性と対地クリアランスの確保を優先するため、構造的な堅牢さも持つリジッドアクスルの採用はクロカン4WDであれば当然の選択でもある。ただし、通常のパートタイム4WDの場合、左右輪のどちらかがぬかるみ等で空転してしまうと反対側の車輪の駆動力も失われてスタックしてしまう可能性がある。そこで4代目ジムニーでは、空転した車輪にだけブレーキをかける「ブレーキLSDトラクションコントロール」を新たに採用。より高度で確実な脱出性能を手に入れている。なお、通常のトラクションコントロールについても副変速機が4Lの時だけでなく、4HでもESP(横滑り防止装置)が作動するようにもなって、こちらでも脱出性能は高まっている。

この4代目ジムニーで静岡県・富士ヶ嶺オフロード特設コースを試乗する機会に恵まれた。ジムニーのような軽自動車で「本当にこんな険しいコースを走れるのだろうか?」という若干の不安を感じながらの試乗だった。

ジムニー オフロードコース試乗の様子

しかし、走り出してすぐにその不安は杞憂であることがわかった。目の前にそびえるように切り立った登坂路も難なく登ってしまったのである。当然ながら軽自動車の排気量では絶対的なパワーはないので、エンジン回転数を上げずに恐る恐る登ろうとするとエンストしてしまう。もしそうなった場合でもヒルホールド機能が搭載されているので、急坂の途中からでも簡単に坂道発進できてしまう。ちなみにトランスファーレバーで4Lを選択するとADAS(予防安全機能)は自動的にオフになるので、障害物だらけの山岳路を走行しても衝突被害軽減ブレーキが作動するようなことはない。

試乗コースは前日に雨が降ったこともあって若干ぬかるんでいたが、ブレーキLSDのおかげで泥濘路を走行していてもスタックしそうな気配は一切なかった。試乗中とくにありがたかったのがヒルディセントコントロールで、勾配7%以上の下り坂に差し掛かると自動的にブレーキを制御して低速を保ってくれるので、ドライバーはコース取りだけに集中できる。

オフロード走行以上に驚いたのがオンロード走行での快適性向上だ。60㎞/h以上で走らせても同乗者と普通に会話できるほど車内の静粛性は高まっている。しかも走行も安定しているのでスピードを出しても恐いという感じは一切ない。おそらく高速道路を長時間走ったとしても嫌な疲労を感じることはないだろう。先代と比べて約40kgも重くなった車両重量が、走行中の安定感向上に寄与しているものと思われる。ただし、車重がこれだけ重くなってしまうと当然ながらエンジンパワーはスポイルされてしまうし、先代のK6A型エンジンに比べると現行のR06A型エンジンはエンジンとしての勢い、とくに中間加速での迫力が薄れてしまった。

静粛性の向上や振動の軽減で乗り心地がスムーズになったことも含めて、硬派なジムニーユーザーからは「こんな大人しいジムニーはオレの求めているジムニーじゃない」と敬遠されるかもしれない。しかし、ジムニーユーザーは意外にもノーマルのまま生活の足として乗っている人のほうが実は圧倒的に多いのだ。トランスミッションの比率についてもMTのほうが断然多そうだが、街を走るジムニーの多くはAT。現行のジムニーは、おそらくそうしたユーザーにこそ一番喜んでもらえるクルマに仕上がっているように思われる。

その一例がユーティリティ面の向上だ。例えば前席はシートのスライド幅が45mm増えて調整幅も10mmピッチになったので、自分の体型や好みに合わせた座り方ができる。さらにステアリングも35mm間隔でチルト調整可能なのでドラポジの調整も行いやすい。

ジムニー 前席
ジムニー 運転席周り

後席についても前後乗員距離が40mm拡大されたことで窮屈な思いをせずに済む。

ジムニー 後席

ちなみに後席のドリンクホルダーが消えたのはシートを倒した時の荷室スペースをフラットにするためで、前席ヘッドレストを取り外してリクライニングさせれば、ほぼフルフラットに近い空間が生まれる。

ジムニー シートアレンジ

荷室開口幅も驚きの1,030mmで、荷物の積み降ろしが随分とラクになった。

そして、おそらく多くのユーザーにとっての朗報が燃費の向上だろう。MT車の燃費はカタログ値で比べると先代の14.8km/ℓ(JC08モード)から16.6km/ℓ(WLTCモード)に向上している。実燃費はせいぜい12km/ℓ台後半だろうと試乗するまでは期待していなかった。燃料タンク容量は軽自動車にしては大きめな40ℓだが、おそらく走行距離は400kmに届く前に警告灯が点くものと予想した。ところが、実際には高速道路3割、市街地4割、郊外路3割で一定距離を走らせた結果、燃費はカタログ値に近い16.0km/ℓをマーク。警告灯も満タンから580㎞の距離でようやく点灯した。

クロカン4WDとしての性能をそのままに、車内での居住性や快適性を向上させて燃費まで向上した4代目ジムニーは、歴代モデルの中でも最もマイルド感が高まったことでコアなファンの間では賛否両論あるだろうが、幅広いユーザーにとっては日常の足として使っても満足できるものとなっている。

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[この記事の監修者]
月間ニューモデルマガジンX編集部
代表取締役社長兼編集長
神領 貢

しんりょうみつぐ 1959年3月20日生まれ。関西大学社会学部マスコミ(現メディア)専攻卒業後、自動車業界誌やJAF等を経て、「ニューモデルマガジンX」月刊化創刊メンバー。35年目に入った。5年目から編集長。その後2度更迭され2度編集長に復帰、現在に至る。自動車業界ウォッチャーとして42年だが、本人は「少々長くやり過ぎたかも」と自嘲気味だ。徹底した現場主義で、自動車行政はもとより自動車開発、生産から販売まで守備範囲は広い。最近は業際感覚で先進技術を取材。マガジンX(ムックハウス)を2011年にMBOした。
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