車の情報誌「ニューモデルマガジンX」編集長監修
かつて人気を集めて軽自動車マーケットを牛耳った普通のハイトワゴンではなく、スーパーハイトワゴンのほうが人気が高いのはなぜなのだろうか。もちろん全高が高いぶん室内が広く感じられるという理由もあるだろうが、最たる理由はスライドドアの有無だろう。いまさら改めて言うまでもないが、送迎や狭い駐車場での乗り降り、荷物の積み降ろしなど、スライドドアの使い勝手の良さは通常のヒンジドアとは比べものにならない。かつて一世を風靡したワゴンRの人気が薄れているのもこれが原因と分析された。
そこでスズキが作ったのがワゴンRスマイルだ。ワゴンRスマイルはベースのワゴンRと比べて全高が45㎜高く、スペーシアと比べて90㎜低い、まさに中間のハイトワゴンという位置づけ。両側スライドドアと高すぎない適度な全高を組み合わせ、ワゴンRのブランド力を使って派生車であるワゴンRスマイルを開発し、2021年9月に市場に投入した。
ワゴンRスマイルは、ワゴンRファミリーの一員としてスペーシアより低い全高1,695㎜に仕上がっている。外観にワゴンRの質実剛健な印象は微塵も残っておらず、ブロックメッシュのフロントグリルと丸みを帯びたヘッドランプはむしろスペーシアを連想させる。イメージとしては、チョップド・ルーフにしたスペーシアといったところか。
前席ヒップポイントはワゴンRより70㎜上がっていてスペーシアと同値に設定。そのため、運転席からの見晴らしは良好で、やや見下ろす感覚がある。一方で後席はワゴンRと同じ高さに設計されていて乗り降りしやすく、160㎜の前後スライドとリクライニングの各機構および座面が沈み込んでフラットな荷室が作り出せる前倒し機構を踏襲。この後席は最前位置までスライドさせても十分なニースペースを確保でき、フロントシートが高めに設置されているおかげでツマ先をシート下に収められる。つまり、奥行き45㎝のラゲッジ床面長を確保しながら後席にも大人がキチンと座れる。これを全長3.4mのコンパクトなボディで成し遂げているのだ。
搭載されるエンジンはNAのみでターボの設定はない。NAのR06D型660㏄直列3気筒DOHCエンジンは49ps/5.9kg-mを発生。ベーシック仕様のGグレード以外は、このエンジンに2.6ps/4.1kg-mを発生するWA04C型モーターによって加速時にエンジンをアシストするマイルドハイブリッドシステムを組み合わせている。アイドリング・ストップからの再始動時に、けたたましいスターター音に付き合わされずに済む点も快適性向上に貢献している。駆動電池はリチウムイオンだ。
グレード展開は、ベーシック仕様のG、ハイブリッドのベーシックモデルであるHYBRID S、そしてハイブリッドの上級仕様であるHYBRID Xの3種類を設定。トランスミッションは全車CVT。駆動方式は各グレードともFFと4WDを設定している。また、LEDヘッドランプ&ポジションランプを採用し、内装の化粧パネルを専用色とした特別仕様車のHYBRID Sリミテッドも用意されている。
セーフティ面では、スズキの予防安全技術であるスズキセーフティサポートを搭載。デュアルカメラブレーキサポートによる衝突被害軽減ブレーキ、バック時にも衝突被害軽減ブレーキが作動する後退時ブレーキサポート、踏みまちがいによる急発進を回避する誤発進抑制機能、シフト入れ間違いによる不意の後退を回避する後方誤発進抑制機能、車線のはみ出しを予防する車線逸脱警報機能、眠気などによるふらつきを予防するふらつき警報機能、うっかり出遅れを予防する先行車発進お知らせ機能、ヘッドランプのハイ/ロービームの切り替え忘れを予防するハイビームアシスト、高速道路で車間距離を保ちながら自動的に加速・減速して停止までサポートするアダプティブクルーズコントロール、標識を認識して安全運転をサポートする標識認識機能などが標準装備あるいはオプション選択できる。このように、安全面も抜かりはない。
運転席に座ると、通常のメーター位置のため速度表示を見る時など視線移動が大きいが、ガラス投影式ヘッドアップディスプレイが付くオプションのセーフティプラスパッケージを選べば速度確認は容易だ。
前席シートはサイドサポートが少なく、ただでさえ大きい車体の揺れを助長してしまう。
後席の膝まわりはスライド前端で32㎝、後端で50㎝とかなり広いのに、感覚的に狭く感じるのは前席シートバックの圧迫感のせいかもしれない。
ラゲッジスペースの床面幅は99㎝あってかなり広い。
床面長は後席スライド後端で28㎝、前端で45㎝、シートバックを倒せば最大113㎝となる。後席はダブルフォールディングシートとなっているため荷室床面がほぼフラットとなるので非常に使いやすく、助手席まで倒せば長い荷物も安定して置くことができる。
試乗したのは上級グレードであるHYBRID X。動力性能は自然吸気の軽自動車としては一般的なレベルにある。シートとサスペンションの仕立てが良いこともあり、乗り心地はマイルドで突っ張った印象もない。また、ルーフパネルのマスチックシーラー、吸音材を兼ねる天井トリムによって風切り音が抑えられ、上半身を囲む部分からの騒音は少ない。かたや、タイヤと床下からの騒音がフロア全体で共鳴してザーッという音が下方から入ってくる点は気になった。これは改善の余地があるだろう。マイルドハイブリッドは、アクセルオフでの回生ブレーキはわずかに利いている程度なので違和感はなく、オーバードライブのように使えるスイッチもあって速度コントロールがしやすい。足回りは柔らかく、前後スタビライザー付きにもかかわらずハードなコーナリングではかなりロールが強い。うねりのある路面でのいなしは良いが、凹凸に対しては当たりは柔らかいものの、車体全体が左右にせわしなく揺動してしまう。
参考までに、一般道4割、高速道6割のトータル301.4㎞走行した総合燃費は満タン法で21.0㎞/ℓとなり、メーター燃費計との誤差もほとんどなかった。WLTCモード燃費値25.1㎞/ℓに対する達成率は約84%と標準的な数値。燃料タンク容量は27ℓなので、一度の満タン給油で約567km走れる計算だ。ちなみに都市部~郊外の一般道ではメーター燃費計は27.3㎞/ℓを示すほど良好だった。やはりマイルドハイブリッドは市街地燃費に効くことも確認できた。
スーパーハイトワゴンは頭上空間が広い反面、横風の影響を受けやすくて挙動が落ち着かない弱点がある。重量が重くて燃費が期待値ほど伸びない点も念頭に入れておく必要があるだろう。その点、ちょうどよい全高のワゴンRスマイルは、日常づかいに便利なスライドドアを持ちながら、こうしたデメリットを気にせず所有できそう。背高ワゴンの魅力を再発見できる1台といえそうだ。
しんりょうみつぐ 1959年3月20日生まれ。関西大学社会学部マスコミ(現メディア)専攻卒業後、自動車業界誌やJAF等を経て、「ニューモデルマガジンX」月刊化創刊メンバー。35年目に入った。5年目から編集長。その後2度更迭され2度編集長に復帰、現在に至る。自動車業界ウォッチャーとして42年だが、本人は「少々長くやり過ぎたかも」と自嘲気味だ。徹底した現場主義で、自動車行政はもとより自動車開発、生産から販売まで守備範囲は広い。最近は業際感覚で先進技術を取材。マガジンX(ムックハウス)を2011年にMBOした。
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