車の情報誌「ニューモデルマガジンX」編集長監修
ホンダN-VANは、2018年7月13日に発売されたホンダの軽自動車「N」シリーズに新たに加わったバリエーションである。しかも「N」シリーズでは初となる軽バン(軽貨物車)だ。ホンダの軽バンといえば1979年から3代に渡って販売されてきたアクティ・バンが存在したが、2018年4月に生産終了するため、その代わりの後継車種として同年4月20日にN-VANが公開された。
アクティ・バンがセミキャブオーバータイプのボディだったのに対して、N-VANは2代目N-BOXと共通のFFプラットフォームを採用している。
しかもベースとなったN-BOXと並べて比較してみると、外板パネルの1枚1枚まで完全に別のクルマだということがわかり、非常にお金の掛かった開発であったことがうかがい知れる。
ただし、商用の軽バンとして考えた場合に、2名乗車時の荷室フロア長がアクティ・バンの1,940mmと比べてN-VANは1,510mmと大幅に削減されており、コンパネの基本サイズである1,800mm×900mmの合板を寝かせて積むことはできなくなってしまった。
しかし、こうした長尺物の積載能力についてはあまり気にしていない人も意外と多くて、「俺らはコンパネなんて積まねぇし」との声も聞かれる。
そもそもN-VANは「これからの軽バンに必要な価値とは何か」という命題のもと、多くのプロたちの意見を聞き、実際の使われ方を研究して、仕事のための道具でありながら生活のためも道具であるという点に着目して開発された。つまり、軽バンとしての使い勝手だけでなく、“遊びのためのツール”という軽バンの新たな価値も提案したのである。そのため、グレード展開は基本のGやL以外にも、個性を際立たせた「+スタイル」も設定。発売当初は丸目ヘッドライトに採用して楽しさを強調した「+スタイルファン」だけでなく、クロームグリル加飾とロールーフ仕様で格好良さを演出した「+スタイルクール」も設定されていたが、現在は「+スタイルファン」のみとなっている。
N-VANの特徴として第一に、軽バンに求められる広い積載スペースと積載作業の効率性を追求するため、ホンダ独自のセンタータンクレイアウトを採用することで荷室を低床化し、高さのある荷物の積載にも対応したことが挙げられる。荷室フロア長を優先した従来のキャブオーバー型の軽バンとはまったく逆の発想である。そのため荷室高は3代目アクティ・バンの1,200mmから165mmも高い1,365mmにまで広がっている。次に、助手席にも後席と同様のダイブダウン機構を採用することで段差のないフラットな荷室床面がインパネ下まで広がり、最大フロア長は2,635mmまで拡大することが可能だ。運転席側のリアシートを併用すれば2名乗車しながら、先述したコンパネの積載問題も助手席側に立てて積むことで解決できる。そして最後は、助手席側の前後ドアにピラー構造を持たせることでセンターピラーレス開口を実現。助手席側開口幅は1,580mmというワイドさを誇り、テールゲート側だけでなく助手席側からもスムーズに荷物の積み降ろしが行える。
こうした機能は商用車ならではの便利機能だが、一般ユーザーがレジャーや車中泊のベース車として使った場合にも便利であると、価値観の拡大解釈を行った点がN-VANの斬新な点だ。のちに11代目となるダイハツ・ハイゼットカーゴのフルモデルチェンジに伴ってハイゼットから派生した6代目アトレーが再び軽貨物車になったことや、スズキ・スペーシアベースが誕生したことからも、こういった軽バンに対する潜在的なニーズがあったことが証明される形となった。
最大積載量は4名乗車時が200kg、2名乗車時が350kg(一部4WD車は300kg)で、2名乗車時の積載能力については他社の軽バンと同等だ。当然ながら積載能力重視なので足回りについては他の軽バンと同様に硬く頑強になっていて、決して快適な乗り心地とは言えない。しかもN-VANの助手席と後席は床下に格納してフルフラットになる構造を持っているので、とくに助手席はシート幅が狭く、座面が薄いことに加えて前傾していてスライド機構もなく、さらに足元の床面はフラットではないため、長時間座り続けることはちょっとした苦行になるだろう。
ユーティリティ面については使い勝手もいまひとつで、運転席周りの収納はカップホルダーが2カ所、スマートフォンが入らないサイズの小物入れが2カ所しかなく、ドアポケットについては薄い上に手の届かない下方にかろうじて備わっている程度。これはつまり、運転席から手の届く範囲に常に使用するような仕事道具を置けるスペースがないも同然である。また、12Vソケットと充電用USBソケットについても、運転席から最も遠いダッシュボード左端にあって不便だ。
インパネのデザインそのものはシンプルかつクラシカルで好ましいが、収納が決定的に乏しいのが非常に残念である。それと、インパネ中央下部に何も設けられていないのは、運転席から助手席側に移動するときのウォークスルーの妨げにならないような配慮なのかと思いきや、シフトレバー下部が大きく張り出しているせいで運転席シートとの間隔は140mm程度しかなく、左右の座席間移動も困難。ユーティリティ面については多くの課題を残している。
荷室の使い勝手については、室内の左半分が2,635mmという長大で完全フルフラットの積載空間にできることや、ボディ左側がピラーレスに設計されているおかげで非常に大きく開く点が他社の軽バンでは絶対に不可能で、画期的と言うほかにない。
カタログでアピールされているように、大きめのオートバイを積むことも可能だし、人生にそう何度もあることではないとしても家具を購入した時や引っ越しの際など、この長い空間や開き方が感動的に役立つ場面もあるだろう。また、車中泊する場合には両手両足を伸ばしても有り余る就寝スペースが確保できるし、ピラーレスの大開口はタープやサイドテントと組み合わせることで、車内と車外がつながった広大なプライベートスペースにすることもできる。シートの格納に関わるレバーやストラップがすべてオレンジで統一されている点も大変わかりやすくて配慮が素晴らしい。
ただ、荷室の床面8個に設けられているタイダウンフックは非常に便利ではあるが、積荷が柔らかい箱などだった場合には底面にダメージを与えてしまいそうで、現状のマウント位置では砂埃などのゴミもたまりやすいので、もうひと工夫ほしいところだ。
走行面については、静粛性はそれなりに高いものの、高速道路で横風が強く吹いている状況下での操安性や燃費の悪さが弱点と言えるだろう。高速道路を100km/hで走らせると横風による失速との戦いになってしまうので、長距離を移動する場合は80km/hで走ることを前提に到着時間を計算したほうが良いだろう。燃費については一般道3割、高速道路7割の計228kmを走って満タン法で13.6km/ℓだったので、他社の後輪駆動の軽キャブオーバーバンと比べて2km/ℓ程度は良好だ。高速域以外での走行については揺れやロールが少なくて安定感があるので、今後はユーティリティと使い勝手の改善が加えられることを大いに期待したい。
しんりょうみつぐ 1959年3月20日生まれ。関西大学社会学部マスコミ(現メディア)専攻卒業後、自動車業界誌やJAF等を経て、「ニューモデルマガジンX」月刊化創刊メンバー。35年目に入った。5年目から編集長。その後2度更迭され2度編集長に復帰、現在に至る。自動車業界ウォッチャーとして42年だが、本人は「少々長くやり過ぎたかも」と自嘲気味だ。徹底した現場主義で、自動車行政はもとより自動車開発、生産から販売まで守備範囲は広い。最近は業際感覚で先進技術を取材。マガジンX(ムックハウス)を2011年にMBOした。
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