ハイブリッド機構による燃費の良さと親しみやすさが光るシエンタ

車の情報誌「ニューモデルマガジンX」編集長監修

この記事の監修者

月間ニューモデルマガジンX編集部
代表取締役社長兼編集長

神領　貢

5ナンバーサイズながら7人乗れるコンパクトミニバンとして、初代から人気があったトヨタのシエンタ。国産コンパクトミニバンで、３列シートの設定があるのは他にホンダ・フリードのみだ。シエンタの3代目が7年ぶりにフルモデルチェンジで登場したのは、2022年８月のこと。外観はもちろん、パワートレイン、プラットフォームも全面的に変更され、エンジンだけでなくCVTも高効率化している。

エンジンは1.5ℓガソリンと、1.5ℓハイブリッドの2種類を設定。両エンジン搭載車ともに上からZ、G、Xの3グレードを設定。それぞれのグレードに3列シートの7人乗りと、2列シートの5人乗りを用意。トランスミッションはガソリンがDirect Shift-CVT。ハイブリッドは電気式無段だ。駆動方式はFFで、ハイブリッドには電動４WDのE-Fourを設定している。

先代の2代目の外観が、初代のシンプルで目立たないものから派手で個性的なものに変わったのに比べて、3代目の外観はどちらかと言えば初代寄りに戻った感じ。フランス車のマネという意見も聞こえるが、トヨタが言う『暮らしに馴染むコンパクト。四角くて丸いシルエット』というシンプルなデザインは、無駄なラインがなくて好感が持てる。

３列シートも多彩なレイアウト変更が可能。2列目のシートバック高が低めでヘッドレストを最大に引き出しても位置が低いとか、3列目のシートが薄 くて居住性が最低限で、補助席的な設定といったネガな部分はあるものの、使い勝手は悪くない。前2席の間にはセンターコンソールボックス等がなく、空間を取ってある。

これは、車内での移動のしやすさに配慮したフロントシートウォークスルーのため。前席からいったん外に出ることなく後席に移動でき、雨の日などに便利だろう。

後席2列の形状は、狭い室内の中でどのようにシートとラゲッジスペースを配置するかを考え、3列目シートを畳んだときに2列目シートの下に収納できるダイブイン機構を採用。さらに2列目シートも前方に回転するタンブル機構になっており、2列目、3列目シートを畳むとリアにフラットで広大なラゲッジスペースができる。サイズ的には車中泊が可能なものだ。

インパネまわりでは、スカットルがやや高めだが、水平基調のダッシュボードのおかげで車幅感覚がつかみやすく、Aピラーの根もとが太くても運転視界に影響はない。

インパネのファブリックはシート地とコーディネートされていて落ち着いた空間を演出。左右乗員のカップルディスタンスも先代より広がったので快適に過ごせる。

ファミリー層がターゲットになっていることもあり、車内の快適性アップ機能も充実。日焼けの原因となる紫外線（UV）を約99％カットし、日射しによる暑さのもとである赤外線（IR）カット機能付のUVカット機能付ウインドシールドグリーンガラス（合わせ・高遮音性・IRカット機能付）／スーパーUVカットフロントドアグリーンガラス（IRカット機能付）／スーパーUVカットプライバシーガラス［IRカット機能付］（スライドドア・リヤクォーター・バックドアガラスを採用。また、後席への日差しを遮るスライドドアのトリム内に内蔵されたサンシェードや、車内の空気を循環させて室内を快適にする天井サーキュレーター。

室内を快適な空気環境にする、エアコン吹出口から室内へ放出される微粒子イオンのナノイーX。シートヒーター、ステアリングヒーターなど上級者並みの装備となっている。フロントシートはサイズが少々小さいのが気になるが、シートヒーターは座面だけでなく背面も暖かくなるのがいい。

最近では、乗員の個人個人がスマホを使うのは普通。そこで、スマホなどを前席でも後席でも充電できるように、シフトサイドポケット前方や運転席のシートバックにUSB端子（Type-C）を設定。