車の情報誌「ニューモデルマガジンX」編集長監修
トヨタ・ヤリスクロスは、ヤリスをベースにしたクロスオーバーSUVだ。ヤリスと同じTNGAコンパクトのGA-Bプラットフォームを採用している。5ナンバーサイズのヤリスとシャシーなどの基本コンポーネンツは共有されているものの、ヤリスより全長・全幅ともに広げられた3ナンバーサイズで、堂々としたスタイルに仕上がっている。顔つきも大きく変わっており、ヤリスとはまったく違うイメージだ。
ホイールベースは国内向けヤリスより10㎜長くて欧州向けヤリスと同じ2,560㎜とし、さらにルーフが水平に設計されたおかげで、後席のヘッドクリアランスはしっかり確保されて窮屈感が解消されている。
エンジンは1.5Lガソリン仕様と、1.5Lハイブリッド仕様の2種類を設定。
両エンジン搭載車ともに上からGR SPORT、Z、G、Xの4グレードを設定。ZにはAdventureグレードも設定。全車、2列シートの5人乗り。トランスミッションはガソリン仕様がDirect Shift-CVT、ハイブリッド仕様は電気式無段だ。駆動方式はFFと4WD(GR SPORTはFFのみ)を設定し、ハイブリッド仕様には電動4WDのE-Fourを設定している。
車名にヤリスが含まれているとはいえ外観デザインは別モノで、170mmの最低地上高が確保されるなどSUVらしい出で立ちだ。ボディが大きくなった分、車重はヤリスより100㎏重くなっている。
インテリアはインパネ上半分がヤリスと共用されているものの、下半分は専用設計だ。
ヤリスに感じた後席・荷室まわりのユーティリティ面での不満はかなり解消されている。4:2:4分割リアシートによって荷室アレンジも多彩になり、足をかざすだけで自動開閉するハンズフリーパワーバックドアなどの新機能も追加されている。
最上級グレードの運転席には微調整が可能で、より最適なドラポジを確保できるパワーシートが採用されているのだが、重量増を抑えるために工夫して1個のモーターで全ての機能を行い、かつ回転式スイッチが用いられているので操作方向にわかりにくさが残ってしまった点が残念だ。
イメージ的に“なんちゃってSUV”に思えてしまうが、実際にはかなり本格的に走れる仕様になっている。4WD車にはスタックした時の脱出に役立つモード切り替え機能が備わっている。
ガソリン車は駆動輪が埋もれないようトルクを出し続ける「マッド&スノー」、「ノーマル」、空転輪にブレーキが介入して接地輪に駆動力を配分する「ロック&ダート」の3モードに、ハイブリッド仕様は「ノーマル」とブレーキが介入する「トレイル」の2モードに切り替えられる。ハイブリッド仕様に「マッド&スノー」のようなトルクを発揮し続けるモードがないのは、後輪モーターの出力容量がそこまで大きくないためだ。浮いて空転する状況で試乗したところ、前述のモードを切り替えることで空転する車輪にブレーキがかかり、接地輪にトルクが配分されて進むことができた。
このほか、滑りやすい下り坂でステアリング操作に集中できるヒルディセント・コントロール、発進時の後ずさりを防ぐヒルスタート・アシストも装備されている。このように街乗りに限らず、河原や雨上がりの草地といった遊びのフィールドにもしっかり対応しており、安心して走行できる。
搭載エンジンは、ガソリンが120ps/14.8kg-mを発生する1.5L直列3気筒DOHC直噴ダイナミックフォースエンジンのM15A-FKS型。ハイブリッドは91ps/12・2kg-mを発生する1.5L直列3気筒DOHCエンジンのM15A-FXEに、80ps/14.4kg-mを発生する1NMモーターを組み合わせている。ハイブリッドに設定されている4WDのE-Fourでは、リアに5.3ps/5.3kg-mを発生する1MMモーターを組み合わせ、発進時や雪道などの滑りやすい路面でスムーズに4WD状態へ切り替えることで発進と走行安定性をアシスト。駆動用バッテリーはリチウムイオン電池だ。
ガソリン仕様のCVTは新機構の発進用ギヤを追加したギヤ機構付自動無段変速機Direct Shift-CVTという高効率タイプで、発進から高速域まで力強くダイレクトな走りだけでなく燃費性能も向上している。
安全性能面では、トヨタSUV初のアドバンストパークを採用。駐車がよりスムーズに行える。また、レーダークルーズコントロール、レーントレーシングアシスト(LTA)、オプションで追加可能な急アクセル時加速抑制機能などを搭載。もちろん、予備安全支援装置システムであるToyoto Safety Senseもしっかりと搭載されている。
快適装備にはスーパーUVカット・IRカット機能付フロントドアグリーンガラス、シートヒーター(運転席・助手席)、ステアリングヒーター、ディスプレイオーディオ(8インチ/7インチ)、電動パーキングブレーキなどを用意。必要十分で、不満ない快適性が確保されている。
ハイブリッド仕様に試乗したところ、走り出しの印象はなかなかスムーズで、ヤリスより100kgの車重増加の影響は感じられなかった。ヤリスでは走行時の挙動に落ち着きがなかったが、ヤリスクロスでは大分落ち着いた感じ。乗り心地も悪くなく、これなら普段使いから長距離まで不満なく乗れそうだ。騒音もヤリスより改善されており、静粛性はなかなかいい。ヤリスは少々やんちゃなイメージだったが、ヤリスクロスは落ち着いた大人のクルマといった感じだ。
ガソリン仕様には発進用ギヤを有するCVTが組み合わされており、停車状態からの発進時にエンジン回転数がムダに上がって騒々しく感じてしまうCVTの弱点が解消されている。ハイブリッド仕様より50㎏軽いおかげでハンドリングも含めて軽快に走ってくれるが、道路の継ぎ目など段差で拾うショックは大きめ。大径タイヤを履いているため、もともと乗り心地が不利なのは仕方ないが、それでもハイブリッド仕様のほうがマイルドな乗り味に仕上がっている。
参考までにハイブリッドZの燃費は、1名乗車、一般路走行、エアコン温度24度設定で普通に170kmほど走行した平均燃費は満タン法で26.5km/Lだった。これは、WLTCモード燃費値27.8km/Lの約95%と優れた数値だ。参考までに車載の燃費計は24.9km/Lを表示していた。燃料タンク容量は36Lなので、満タン法の計測値から計算すれば、一度の満タン給油で900kmほど走れる計算だ。
ガソリン仕様のZの燃費は、高速道路走行180kmを含む約300kmの満タン法による平均燃費は16.0km/Lだった。これは、WLTCモード燃費値18.8km/Lの約85%と平均的な数値だ。参考までに車載の燃費計は16.1km/Lを表示していた。燃料タンク容量は42Lなので、満タン法の計測値から計算すれば、一度の満タン給油で670kmほど走れる計算だ。基本的に同じ1.5Lエンジンを搭載しながら、ハイブリッド化によって燃費が10km/L以上良くなるというのは驚き。トヨタハイブリッドシステムの効率の良さを再確認した。
テスト車の価格はハイブリッドZ(FF仕様)が約260万円、ガソリンZ(FF仕様)が約223万円と約37万円の差だ。燃費や乗り心地の良さを考えると、この差ならハイブリッドを選ぶのが正解に違いない。
しんりょうみつぐ 1959年3月20日生まれ。関西大学社会学部マスコミ(現メディア)専攻卒業後、自動車業界誌やJAF等を経て、「ニューモデルマガジンX」月刊化創刊メンバー。35年目に入った。5年目から編集長。その後2度更迭され2度編集長に復帰、現在に至る。自動車業界ウォッチャーとして42年だが、本人は「少々長くやり過ぎたかも」と自嘲気味だ。徹底した現場主義で、自動車行政はもとより自動車開発、生産から販売まで守備範囲は広い。最近は業際感覚で先進技術を取材。マガジンX(ムックハウス)を2011年にMBOした。
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