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ライズは軽自動車では飽き足りないユーザーにオススメのコンパクトSUV

車の情報誌「ニューモデルマガジンX」編集長監修

この記事の監修者
月間ニューモデルマガジンX編集部
代表取締役社長兼編集長
神領 貢

トヨタの5ナンバーサイズ小型SUVであるライズ。ダイハツとの共同開発車で、ダイハツ・ロッキーと兄弟車。基本的な設計や製造はダイハツが担当している。ダイハツとトヨタで販売されていたAセグメントSUVと言えば、2016年3月で販売を終了したダイハツ・ビーゴ/トヨタ・ラッシュを思い出すが、あちらはビルトインラダーフレーム式モノコックのボディ構造に縦置きエンジンを積んだFRレイアウトで、センターデフロックを備えたかなり本格的なクロスカントリーSUVだった。しかし、いまはFFレイアウトでスタイリッシュなボディを身にまとい、燃費性能にも優れたクロスオーバーSUVが人気であり、2019年末に約3年半の空白期間を経てようやく発売された事実上の後継車がライズ/ロッキーだ。ライズは、製造しているダイハツが進めている軽量・高剛性のDNGAプラットフォームを採用している。

ライズ DNAGプラットフォーム
ライズ Dモノコック

エンジンは1ℓターボでデビューしたが、2021年のマイナーチェンジで、シリーズハイブリッド仕様が追加された。エンジンで発電した電気でモーターを駆動して走る、日産のe-POWERと同じ方式だ。ダイハツでは、eスマートハイブリッドと呼んでいる。同時に、FF仕様のガソリンエンジンが1ℓターボから1.2ℓNAへとチェンジ。
基本はeスマートと同じエンジンだ。ちなみに、1ℓターボエンジンは4WD仕様にのみ継続搭載されている。

FFの1.2ℓと4WDの1ℓターボは、Z、G、Xの3グレードを設定。ハイブリッドはZ、Gの2グレードとなっている。トランスミッションはハイブリッドが電気式無段、それ以外はロックアップ付きトルコンを組み合わせた7速シーケンシャルシフト付きCVTだ。

全長約4m、全幅1.7m未満の5ナンバーサイズだが、小さくても存在感ある堂々としたデザイン。基本的な外観はダイハツ・ロッキーと共通だが、ライズはトヨタ顔を採用しており、押しの強さがある。
インテリアは少々プラスチッキーで子供っぽい感じ。

ライズ 運転席周り

前席、後席ともに大きな不満はないが、シートは中材の硬度の影響か、それとも表皮の張りの影響なのか、長時間乗り続けると尻ともも裏が痛くなった。とくに座面の横方向ステッチの部分が硬く感じられた。この辺りは改善して欲しいポイントだ。

ライズ 前席シート

後席シートは6:4分割で前方に倒せる。後席を倒したときの最大床面長は133㎝。床下はガソリン車であればスペアタイヤが収まるほど広い収納スペースがある。

ライズ 床下収納

搭載するパワーユニットは、98ps/14.3kg-mを発生する1ℓ直列3気筒DOHCインタークーラーターボの1KR-VET型エンジン。87ps/11.5kg-mを発生する1.2ℓ直列3気筒DOHCのWA-VE型エンジン。そして、82ps/10.7kg-mを発生する1.2ℓ直列3気筒DOHCエンジンのWA-VEX型エンジンで駆動した電気で、106ps/17.3kg-mを発生するE1Aモーターを駆動するハイブリッドの3種類を設定。駆動用バッテリーはリチウムイオン電池だ。

ライズ 1.2ℓ直列3気筒WA-VEX型エンジン
ライズ 駆動用バッテリー

まずはハイブリッドに試乗してみた。車重は1.1t弱と軽量なので、低速から高トルクを発生するモーターにより発進からスムーズに走ることができる。エンジンが始動しないEV走行はごくわずかで、基本的に走行中はエンジンが常に動いている印象だ。充電時のエンジン音は静かではないが、不自然に高まることはなく、一般的なガソリンエンジン車を運転しているような自然な感じ。走行中に気付いたのは、乗り心地がとても良いこと。路面からのショックをスムーズに吸収し、荒れた路面でも快適に走行できた。切り始めに少々ゴムをねじるような反力のある電動パワステの感触が不自然な点を除けば、なかなか気持ちよく走ることができた。回生機能を生かし、アクセルペダルを弱めるだけで減速Gを得られるスマートペダルも新開発された。すでに日産で実用化されている機構と同じで、ペダルを踏み替える頻度を減らせる点がメリットに挙げられる。慣れるまでは多少ギクシャクしてしまうかもしれないが、慣れるとこれも走りやすいかもしれない。

ちなみに、発電だけのために1.2ℓもの排気量が必要なのか。手持ちの660㏄エンジンでは実現できなかったのか?との疑問も湧くが「エンジンの仕事量を減らすには、電気をたくさん貯めておける大きなバッテリーが必要になる。しかし、バッテリーの搭載量を増やすと価格&重量が上がってしまって『良品廉価』に反する。バッテリー容量を増やすよりもエンジン排気量を拡大したほうが安く済む」と、開発関係者はユーザーメリットも加味した結果だと説明していた。

次に1.2ℓエンジン仕様に試乗した。基本はハイブリッドと同じエンジン。アイドリングストップ機構も搭載されている。最大トルクはハイブリッドのモーターのほうが5割ほど太いが、ガソリン仕様は車重が100㎏ほど軽量の980㎏。そのせいか、一般走行をしている限り、不満なくスムーズに走ることができる。基本的な走行フィーリングはハイブリッドと同じなのだが、唯一違うのは路面のショックをマメに拾うことだ。タイヤの銘柄、サイズ、空気圧は両車共通なのに、だ。空気圧が高いのでは?とチェックしたところ、わずかにハイブリッドより高かったものの、それも誤差の範囲。規定値に合わせ直したが、乗り心地はわずかに改善しただけで、ハイブリッドのような快適性は得られなかった。どうやら、ハイブリッドの重い車重がいい方に働いているようだ。どちらかといえば、重いハイブリッドで設定したサスペンションを共通で使っているため、1.2ℓガソリン仕様では少々跳ね気味になっているのかもしれない。この辺りはぜひ見直してほしいところだ。

燃費も計測してみた。ほぼ共通エンジンながら、ハイブリッド化によってWLTCモード燃費値が20.7km/ℓから28.0km/ℓと約35%も向上するというからだ。ハイブリッドの燃費は、1名乗車、一般路走行、エアコン温度24度設定。ノーマルモードで普通に走行した状態で148kmほど走行した平均燃費は、満タン法で23.6km/ℓだった。これは、WLTCモード燃費値28.0km/ℓの約84%と標準的な数値だ。参考までに車載の燃費計は24.5km/ℓを表示していた。燃料タンク容量は33ℓなので、満タン法の計測値から計算すれば、一度の満タン給油で778kmほど走れる計算だ。

1.2ℓガソリンの燃費はというと、ハイブリッドと同条件で155kmほど走行した平均燃費は、満タン法で18.9km/ℓだった。これは、WLTCモード燃費値20.7km/ℓの約91%と悪くない数値だ。参考までに車載の燃費計は19.4km/ℓを表示していた。燃料タンク容量は36ℓなので、満タン法の計測値から計算すれば、一度の満タン給油で680kmほど走れる計算だ。テスト結果では、残念ながらハイブリッド化による燃費向上率は約25%と、カタログ表示値の約35%向上には届かなかった。それでも、ほぼ同じエンジンながらハイブリッド化で約25%も燃費が向上するのはとても興味深い結果だ。

テストしたライズのベース価格はハイブリッドが約234万円、1.2ℓガソリンが205万円と、上級モデルにしては安価な設定。約29万円の差ならハイブリッドはちょっと気になる。また、1.2ℓガソリンのエントリーモデルであるXは約171万円から用意されている。軽自動車ではなく普通車で安いクルマを探しているのであれば、1.2ℓガソリンのXは狙い目のクルマと言えるかもしれない。

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[この記事の監修者]
月間ニューモデルマガジンX編集部
代表取締役社長兼編集長
神領 貢

しんりょうみつぐ 1959年3月20日生まれ。関西大学社会学部マスコミ(現メディア)専攻卒業後、自動車業界誌やJAF等を経て、「ニューモデルマガジンX」月刊化創刊メンバー。35年目に入った。5年目から編集長。その後2度更迭され2度編集長に復帰、現在に至る。自動車業界ウォッチャーとして42年だが、本人は「少々長くやり過ぎたかも」と自嘲気味だ。徹底した現場主義で、自動車行政はもとより自動車開発、生産から販売まで守備範囲は広い。最近は業際感覚で先進技術を取材。マガジンX(ムックハウス)を2011年にMBOした。
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